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2014年9月24日水曜日

2013年8月、11月 2014年3月、4月、5月、6月、8月、9月

去年の8月、11月、今年の3月、4月、5月、6月、8月、9月に詠んだ短歌をまとめておく。既にこのブログに公開した歌が6首、そうでないものが29首で、計35首。御感想を頂けると嬉しい。

季節

青空に乾いた音がするときにちひさく咲いたそのむらさきは

しらじらと咲けるひるがほしらじらとうは向き咲けるそのひとひらを

夏芝の痛みをせなに湧き上がる雲のかたちを確かめてゐた

その虫の翅は黒かつた なにものにも(夕陽にも)染まらない色だつた

日本海の水平線のある場所で「ああ、鳥が」なつかしいひとのこゑ

目をつぶることを知らない太陽が木々の葉を黄色く染めてゐた

銀杏のかたちを知らないてのひらに球体をただころがしてゐた

もみぢする葉つぱ雨に濡れる葉つぱわたしの足に踏まれる葉つぱ

しじみ蝶は枯葉にまどふ栗色の翅をしてすこしも動かない

朽ちはてた椿のかをり確かめて春の陽のさすいただきを去る

さくらばなふりしきる道にのこされたあたらしい葉の色を見てゐる

落椿おちつばき雨にくだけてのこされた椿とともに紅々と咲く

ひとところ光さしこみくすのきの葉がゆつくりと落ちてくる迄

木々の葉の影こまやかに映し込み疎水に春の声が聞こえる

綿毛の塔に風やはらかく吹き込んで崩れ去るにはまだ早いから

かなへびの舌ちろちろと春の陽にややあたたかい敷石をゆく

傾いた太陽の色に山吹の花々のかさなつてゆくころ

くすのきの葉がつぎつぎと落ちてきて枯れつくすほどのことではなくて

芥子の花ひとすぢ伸びて吹きわたる風つよければ折れさうなほど

新緑の深まるときに蝶はたかくどこまでたかく飛べるのだらう

あげはてふの翅おだやかに振動し何かが始まらうとしてゐる

しじみ蝶は絡みあひ離れあひながら草々のさきにふれてはなれて

青条揚羽アヲスヂアゲハの青あざやかに閃いてあたらしい夏のおとづれを知る

五月雨にささやかな影落としつつあなたとあなたの話がしたい

目をひらくことで世界を把握して ゐた あなたが 目を閉ぢるとき

手のひらのあたたかさよりあたたかいそんな幸せなのかもしれない

紋白蝶あのしろいいろゆれてゐる路上にはぐれたあのしろいいろ

揚羽蝶たかくとび見えなくなるまでの時間に雨が降りだしてゐる

紫陽花がすこし朽ちはじめるやうなさういふ湿度を感じてゐた

あなたの服がゆつくりと波打つまでの時間を風が吹きぬけてゆく

色褪せた花びらがなほあぢさゐの花のかたちを彩つてゐた

夏空に湧きあがる雲をいつからか写真にしようと思はなくなつた

レターセットは切らしたままであたらしいあなたへの手紙を書きだした

あげはてふはまだゆれてゐるあたらしい季節のおとづれを知らぬまま

あたらしい季節の花が咲きだしてあのころの蝶はまだゆれてゐる

2013年6月4日火曜日

2013年5月

5月に詠んだ短歌をまとめておく。既にこのブログに公開した歌が3首、そうでないものが3首で、計6首。御感想を頂けると嬉しい。

夏雲

たをやかな風にゆらいだ薔薇の色はすでにかわいてゐるはつなつの

夏痩せた身体は風にはこばれて鳥居をくぐれば新しい街

はるかなる道はるかなる夏雲にちひさく息を吹きかけてみる

バスケットゴールの網は朽ち果ててひとところ光のあたる場所

塀の高さに薔薇たち上がり一寸ちよつとだけ背伸びをしても手は届かない

窓際に金魚を飼ひて暮らしゐるあなたへ送る絵はがきのねこ

2013年5月5日日曜日

2012年12月 2013年3月、4月

去年の12月、今年の3月と4月に詠んだ短歌をまとめておく。既にこのブログに公開した歌が12首、そうでないものが1首で、計13首。御感想を頂けると嬉しい。

椿

冬の陽はひくく差し込むすすき穂のゆれ 風のこゑ 飛ぶ白き種子

深くなればなるほどふかまる水の色に「川の匂ひがする場所ですね」

ほつとりと椿ちりかかる道肌に杖つき歩むひとびとのこゑ

菜の花に蔓からませて何らかのマメ科植物がのびてゐる

落ちてゐる椿ついてゐるつばき鮮やかな色といふほどもなく

散りかかる椿やまぶき咲き初むる於美阿志神社の境内の春

明転するひかりの海にくるまれてなのはなの色は視認できない

風のはやさでちひさく浮上するさくら(あれは)蝶の翅です

気づいたらそこにはゐない鳥のゐた場所に挿入する青い色

乾いた色をしてゐるつばき冷えきつた花弁にゆびをすべらせてゆく

くすのきの葉の生えかはるときとして今年も春を送らむとする

白いはなびらの落ちてゐるさみどりの森の何処かに咲くしろい花

花の名をひとつ知りても、てのひらのあなたのことはなにも知らない

2013年2月13日水曜日

2012年11月

去年の11月に詠んだ短歌をまとめておく。14首。御感想を頂けると嬉しい。

しじみ蝶

収穫を終へし田の面に組まれゐる 藁の構成 我の構成

透明な秋のひかりにくれなゐのほほづきひとつふたつみつよつ

人びとのあゆむ速さに滲みゆく銀杏並木のあをいろきいろ

焦げ茶色の陸橋に汽車はあらはれずあとすこしだけ此処にゐる 時間

とびとびにとぶ雲を見るあきかぜのはてにはなにもない空もあり

夏には花でうめつくされたこの場所にいまふたひらひらく秋の薔薇みゆ

百合の木の量感あはく色づいた茶色い葉から順に落ちてゆく

くすりゆびで引つ掻いたやうなきづあとを(そこにはゐない)雲がのこした

すこしだけさみしくなつた銀杏の葉の空白にまた冬が来りぬ

ポケツトから柿の実ひとつ取りだして一寸ちよつとなげてみる軌道のやうな

赤さびた柱に組まれし廃屋に 吹きぬくる風 生えのぶる蔦

冬薔薇の棘の硬さに食ひ込んだ人差し指に血は出て来ない

木の椅子は秋のひかりに温かく降りやまぬ葉の重さをおもふ

しじみ蝶のからまりあつて昇りゆく 太陽にかさなつてみえない

2012年10月31日水曜日

2012年10月

10月に詠んだ短歌をまとめておく。既にこのブログに公開した歌が4首、そうでないものが2首で、計6首。御感想を頂けると嬉しい。

淡海

青条揚羽アヲスヂアゲハのからまりほどけゆく夏の終りの一呼吸 空の味

海のやうな湖がある場所にきて釣竿なげる父子をみてゐる

淡海のとうめいなみづ冷たくて終らない夏の終りを思ふ

瓦から生えたつる草もみぢする 園城寺 秋のはじまりのこゑ

ずいぶんと世界が薄いみづいろの空 地平線 をりかへす波

銀杏をふまないやうにかはしゆく花柄のシャツの背中が遠い

2012年10月7日日曜日

2012年9月

9月に詠んだ短歌をまとめておく。既にこのブログに公開した歌が5首、そうでないものが2首で、計7首。御感想を頂けると嬉しい。

黄金

新宿へむかふ車窓に目をあけてゐるひとと目をとぢてゐるひと

なめらかな尾びれを見せてぬらぬらと睡蓮の間をゆく鯉のみち

島じまを束ねた水上帝国の王たる黄金色の睡蓮

こがね色の稲穂の海に甍舟いらかぶね浮かびあらそふ奈良なつのはて

あをあをと墳丘まろきこの場所からいちばん綺麗な明日香が見える

掌に銀の星宿煌めかせ古墳の谷になびくすすき穂

黄昏の稲穂にともる太陽は青い私の眼を灼くばかり

2012年9月16日日曜日

2012年8月

8月に詠んだ短歌をまとめておく。既にこのブログに公開した歌が4首、そうでないものが3首で、計7首。御感想を頂けると嬉しい。

飛行機

夏空をエクスクロスに切り裂いて太陽に近づくツバクラメ

黒髪を濡るるにまかせ霞ゆく糺の森にたたずめるひと
(夕立に髪を濡るるにまかせ行く少女を夏よあまねく奪へ  笹谷潤子『海ひめ山ひめ』)

あなたの空を目指して飛んだ僕たちの飛行機を納める格納庫

南京に朝はおとづれクラクションのけたたましくも鳴り初むる哉

南京の街を歩めば片隅に猫空・咖啡店マオコン・カーフェイディエン招牌ジャオパイ

南京の街を歩めば遠景は霞の奥に霞むビル群

南京の街を歩めば路地裏に干されし服の青・緑・青

2012年8月9日木曜日

2012年7月

7月に詠んだ短歌をまとめておく。既にこのブログに公開した歌が4首、そうでないものが7首で、計11首。御感想を頂けると嬉しい。

ニウス

それぞれの軌道を見せてゆるやかにつばめ散開する町はづれ

雨上がりの腕に小蜘蛛をまとはせてすこしだけ高い空を見てゐた

立葵崩れたままの中庭に青い如雨露をかたむけてゐた

早朝の雨につばめがさらはれた事件のニウスを聴く朝の卓

都はづれに朝はおとづれ山際に鳥の過ぎ去る様を見てゐつ

水分を失ひやすき夏の日に立葵崩れつつ咲き継げり

水分を失ひやすき夏の日は祇園祭の群集の中

あふれだすインクの海をくぐりぬけ夏には白い雲ばかり行く

たかいところひくいところに散らばつた雲をひとひらすくひとるひと

青条揚羽アヲスヂアゲハのさまよふ向きに十字路をはづれてすこしづつ曲がる道

てふてふのまはる向日葵まはるまはるどのめぐりにもひらく花、花。

2012年7月1日日曜日

2012年6月

6月に詠んだ短歌をまとめておく。既にこのブログに公開した歌が8首、そうでないものが9首で、計17首。御感想を頂けると嬉しい。

安眠

紋白蝶あらはれては消え雨模様ここにもあそこにもどこにでも

紋白蝶あらはれては消えどこへでもあらはれては消え 雨 あらはれて

紋白蝶あらはれては消えここにゐてあそこにもゐてどこにもゐない

五重塔重く立ちたり興福寺鳩は翼を黒くなびかせ

崩れ落ちた肌をたたへて遠近をちこちの十二神将黄昏の中

どこまでも瞳は見えない栗色のまなこゆるませねむりゆく鹿

土壁に白く陽は差しうぐひすもほととぎすも鳴く斑鳩の里

黒い蟻が巣からでてくる何事か為して戻つてくる蟻もゐる

連なりて飛ぶ蝶のゆく軒下に紅く咲きたる紫陽花を見つ

青空を背景として電線にとどまる黒い鴉の黒さ

葡萄畑の匂ひ嗅ぎつつまだ青い果実ばかりの夢をみてゐた

紫のふかいあぢさゐすこしだけ青いあぢさゐ紅いあぢさゐ

夢はかたむき瞼はおもく小雨ふる町のかたへに白きあぢさゐ

久しぶりに顔を上げれば雲の上に雲がありまたその上の雲

眠りとは慎ましいもの珈琲を深く飲みほすのちの安眠

ポケツトに切符はないから朝焼けの燃える地上へ向かふほかなく

中庭に木々は群立ち梢から根本まで夏風の領空

2012年5月31日木曜日

2012年5月

5月に詠んだ短歌をまとめておく。既にこのブログに公開した歌が12首、そうでないものが8首で、計20首。御感想を頂けると嬉しい。

保津川

歳月をかさねし夢の白鯨のあめたかく吹く潮の稜線

どこへでもゆけるやうな青空にとろける異郷のガラスの駅舎

こんなところにも紋黄蝶ゐて嵯峨野ゆくわたしと山吹と竹の原

初夏の風にゆられて小麦畑織りなす白きさざ波を見つ

鳥のこゑを聞きわけながらまだなにも植えられてゐない田を歩みをり

保津川のながれにそひて移りゆくみづいろの空ももいろの空

小麦のなかを去りゆく電車 わたくしも先へと進まねばならぬゆゑ

初夏の熱にうなされ薔薇の花フェンスの奥にあらはれては消え

ひとつづつともるまちの灯やまの端はとほくなりゆくほど薄くあり

ところどころに白き松かさ落ちてゐる橅また橅の道を歩めり
(晩夏なりぶなまた橅の旅にあり  堀口星眠『青葉木菟』)

これよりは下り坂なりふみしむる枯枝の音楽しみてゆく

初夏のひかりあふるる山林に 風なり 木々の影うごく見ゆ

山道をくだりくだりてサイレンの鳴り響く村の片隅に出づ

山道をくだりくだりて南天の実れる人家の片隅に出づ

鶯の谷わたる声あとにして降り来る山に別れを告ぐる

初夏のひかりのなかを黒揚羽つつじもとめて我のさきゆく

たかいところ・ひくいところをゆきあへる黒揚羽また逢ふことはなし

枯れてゆくものばかりありひとところ残るつつじに黒揚羽舞ふ

町のなかをゆきあふ流れにしたがひて水面ばかりの場所へ着きたり

なつかしい水田をゆく自転車の車輪はすこし歪んだままで

2012年4月30日月曜日

2012年4月

4月に詠んだ短歌をまとめておく。既にこのブログに公開した歌が4首、そうでないものが17首で、計21首。御感想を頂けると嬉しい。

残照

緑色の世界をみてゐた虫の眼に燃えるグラジオラスの残照
(靉光「グラジオラス」)

もつとたかいところへゆけたら空のやうに僕たちもまた青い存在
(天之蒼蒼其正色邪、其遠而無所至極邪 、其視下也、亦若是則已矣  荘周『荘子』)

木の肌と同じ色もてあをによし奈良の小鹿のたたずまひ見ゆ

紅白のはちす花咲く東大寺襖の内に風わたりける
(小泉淳作「蓮池」)

ともしびを順にならべて東大寺鹿はいづこの宿に眠れる

あたたかい朝もあるから自転車の空気を入れて並木道ゆく

桃色のしだれ桜をかたはらに平等院の春風は吹く

薄日さすもみぢの青さたしかめて桜ちりしく宇治の道ゆく

はなびらと見まがふほどに紋黄蝶さくら舞ひふる鴨川にとぶ

自転車の骨組みゆるく解体し春の風うつ両翼となる

ひともとの楽園 熊蜂くまんばちが来て白詰草の先にとまれり

おもたくて――柔くたわめる茎を持ち白詰草に熊蜂垂るる

オレンジ色の層をにじませ暮れてゆく町のあはひに漕ぎ出づる舟

春雨の降る音がする 菜の花の黄色は届かない場所にあり

春雨の降る音がする 楠を順にめぐつて匂ひ立つ朝

春秋をかさねて青き楠の葉のちりゆくものとちりゆかぬものと

もみぢせる葉影ちりゆく楠に残れる若き青き葉を見る

鉄のドアの前にたたずみ色もなく暮れゆく町の蝙蝠を見る

ドアノブは冷たくふれて色もなく暮れゆく空に蝙蝠が飛ぶ

薄翅に白く陽のさす常磐木の葉影ふるなへさまよへる蝶

松かさはすてられずありかごとともに、わたしとともに初夏の町ゆく

2012年4月5日木曜日

2012年3月

3月に詠んだ短歌をまとめておく。既にこのブログに公開した歌が5首、そうでないものが2首で、計7首。御感想を頂けると嬉しい。

あさみどり苔しく幹にてのひらをかさねて遠き沢の音をきく
(はかなしやわが身の果てよあさみどり野辺にたなびく霞と思へば  小野小町『新古今和歌集』)

雲の色をたしかめたくて 水平線ホライズン 大きな海のはじまりに着く

蟹の爪ひからびてゐる海岸に薄墨色の雲を数ふる

灰色の世界が変はる海の辺にあまねく光ゆきわたるとき

あたたかき風に誘はれ軍艦のただよふ春の横須賀に来ぬ

鈍い青たたへて朝の浜名湖は僕らの高速道路フリーウェイを見てゐた

紋黄蝶とんでゐる場所 あたらしき部屋に来りて庭を眺むる

2012年2月26日日曜日

2011年6月、8月、9月 2012年1月、2月

去年の6月、8月、9月、今年の1月と2月に詠んだ短歌をまとめておく。既にこのブログに公開した歌が2首、そうでないものが13首で、計15首。御感想を頂けると嬉しい。

地平

蒼鷺の澄めるまなこは水田に映るアパートなど気にもせず

アヲサギハウゴカズ 動く私もしばらくは蒼い身体を見つめてゐよう

純色の構造物と水田に囲まれて雨後の富山市に立つ

一二三四五六七八九鴉ばかりの水田である

夏風は田の面をゆらし、いつからか波のかたちは変はらぬままで

簡単な人でありたい薄い雲ばかり行き交ふ夏空のもと
(かんたんなものでありたい 朽ちるとき首がかたんとはずれるような  佐藤弓生『眼鏡屋は夕ぐれのため』)

大きさがわからないから 雨をもつ雲と雨をもたない僕と

この町の駅舎えきのライトに照らされてひとりにひとつづつ影はある

暮れてゆく街並はあり少しづつ紅き地平へ向かふ雲見ゆ

墜落のかたちをなしてひとすぢの雲が裂きゆく天空を見る

踏切の鳴る音がする冬空にまだ青い街の色を見てゐた
(うつくしい牛の眼をして運命がまだやわらかいぼくを見ていた  佐藤弓生『薄い街』)

駅の上を鳥が飛んでゆく 僕たちはまだ青い街の色を見てゐた

逆光のなかにある街 清水の舞台の傾斜たしかめながら

水中のあしをわづかにはためかせ鴨は水面に静止してゐた

円形の波紋をラインにならべつつ鴨が水面に描く幾何模様

2011年6月2日木曜日

2011年4月、5月

4月と5月に詠んだ短歌をまとめておく。すべて既にこのブログに公開した歌で、計7首。御感想を頂けると嬉しい。

球体

薄闇のホームを抜けて無灯火の車両に淡き春の陽の満つ

大学へ向かふ昇り坂 人並の幸せとしてさくらはな咲く

春雨の降る駐車場帰りゆく浮かぬ心にあまた水紋

もうやはらかくほほをうつこともなく――霧中に浮かぶ街に雨降る

球体の破壊あるいはたんぽぽの綿毛をとばす 遠くへ あるいは

どこへでもゆきたくてどこにもゆけない私のめざすゆきさきは 街

いまひとたび逢ふことはなくここに昨日しづかに伏してゐし蜂の貌

2011年4月6日水曜日

2010年12月 2011年1月、2月、3月

去年の12月、今年の1月、2月、3月に詠んだ短歌をまとめておく。既にこのブログに公開した歌が8首、そうでないものが18首で、計25首。御感想を頂けると嬉しい。

雪降りて真白にならむ大地思ひ幾多の色の現実に立つ

夕闇に工業団地の灰色の煙たゆたふ空へ雲へ

無灯火で自転車こぎゆく暗闇にからだ融けあふもつともつと黒へ 

雪ふらすぼんやり白き空ながめ自転車の鍵かちりと閉めつ

傘散らす雪の軽さに身をゆだね誰も通らぬ白き道ゆく

ほそぼそとわだち頼りに踏みゆきし昨日の想ひ除く除雪車

尾長もつ胸の曲線なめらかに白く交はる雪原を見つ
(胡椒挽きのもつつややかな曲面に君の煙草の歪むを見たり  田口綾子「風上に立つ」)

鈍き音軋ませ緩く止まりたる老いし車輛は雪降る中に

舞ひ降れる雪に埋もるる米原駅まいばらにスプリンクラーはかなく水を

夢のなき街をくぐりて地下鉄は仄かに青く暮るる地上へ

立つ虹の流れをたどり消えてゆく淡き終りを見つめてゐたり

ふるさとの駅に迎への自動車のあることそこにただ あることの

美容師の刻むリズムは軽やかにわたしの髪はもうただの 景色

回転する欲望 回る寿司見つめ少しさみしく鯵の皿とる

乾杯の声テーブルにゆきかひて淡きビールのにがさ噛み締む

ゆきどけに水面はあり冬舗道ひかりを受けていづこにも空

わたしには昨日のあなたの微笑ほほゑみの理由がわかりかねて 月面

山の端も田の面も紅き夕影を見せてひとすぢ白きセスナ機

はくたか・とき・東海道線と乗り継いで小田急線の青き縞見ゆ

つぎは、ひらつか、ひらつかです人のまばらに立つ車両降る

淡雪の降る山国を離れ来てやや暖かきふるさとの風

交差点の傍らに立つ郵便ポスト 行き合ふ自動車くるまは絶ゆることなく

東光飯店・四五六菜館 中華街は街のつづきにゆるやかにあり

とどめたくもとどまらず去る船は長く永く波紋を残しゆきたり

少しづつ回る観覧車デジタルの時計は3時11分です