2012年2月26日日曜日

2011年6月、8月、9月 2012年1月、2月

去年の6月、8月、9月、今年の1月と2月に詠んだ短歌をまとめておく。既にこのブログに公開した歌が2首、そうでないものが13首で、計15首。御感想を頂けると嬉しい。

地平

蒼鷺の澄めるまなこは水田に映るアパートなど気にもせず

アヲサギハウゴカズ 動く私もしばらくは蒼い身体を見つめてゐよう

純色の構造物と水田に囲まれて雨後の富山市に立つ

一二三四五六七八九鴉ばかりの水田である

夏風は田の面をゆらし、いつからか波のかたちは変はらぬままで

簡単な人でありたい薄い雲ばかり行き交ふ夏空のもと
(かんたんなものでありたい 朽ちるとき首がかたんとはずれるような  佐藤弓生『眼鏡屋は夕ぐれのため』)

大きさがわからないから 雨をもつ雲と雨をもたない僕と

この町の駅舎えきのライトに照らされてひとりにひとつづつ影はある

暮れてゆく街並はあり少しづつ紅き地平へ向かふ雲見ゆ

墜落のかたちをなしてひとすぢの雲が裂きゆく天空を見る

踏切の鳴る音がする冬空にまだ青い街の色を見てゐた
(うつくしい牛の眼をして運命がまだやわらかいぼくを見ていた  佐藤弓生『薄い街』)

駅の上を鳥が飛んでゆく 僕たちはまだ青い街の色を見てゐた

逆光のなかにある街 清水の舞台の傾斜たしかめながら

水中のあしをわづかにはためかせ鴨は水面に静止してゐた

円形の波紋をラインにならべつつ鴨が水面に描く幾何模様