2012年7月1日日曜日

2012年6月

6月に詠んだ短歌をまとめておく。既にこのブログに公開した歌が8首、そうでないものが9首で、計17首。御感想を頂けると嬉しい。

安眠

紋白蝶あらはれては消え雨模様ここにもあそこにもどこにでも

紋白蝶あらはれては消えどこへでもあらはれては消え 雨 あらはれて

紋白蝶あらはれては消えここにゐてあそこにもゐてどこにもゐない

五重塔重く立ちたり興福寺鳩は翼を黒くなびかせ

崩れ落ちた肌をたたへて遠近をちこちの十二神将黄昏の中

どこまでも瞳は見えない栗色のまなこゆるませねむりゆく鹿

土壁に白く陽は差しうぐひすもほととぎすも鳴く斑鳩の里

黒い蟻が巣からでてくる何事か為して戻つてくる蟻もゐる

連なりて飛ぶ蝶のゆく軒下に紅く咲きたる紫陽花を見つ

青空を背景として電線にとどまる黒い鴉の黒さ

葡萄畑の匂ひ嗅ぎつつまだ青い果実ばかりの夢をみてゐた

紫のふかいあぢさゐすこしだけ青いあぢさゐ紅いあぢさゐ

夢はかたむき瞼はおもく小雨ふる町のかたへに白きあぢさゐ

久しぶりに顔を上げれば雲の上に雲がありまたその上の雲

眠りとは慎ましいもの珈琲を深く飲みほすのちの安眠

ポケツトに切符はないから朝焼けの燃える地上へ向かふほかなく

中庭に木々は群立ち梢から根本まで夏風の領空

2 件のコメント :

  1. 五重塔重く立ちたり興福寺鳩は翼を黒くなびかせ
     (古都の情景を詠んで余りありません。第五句の「黒くなびかせ」に叙情性のやや物足りなく。)

    夢はかたむき瞼はおもく小雨ふる町のかたへに白きあぢさゐ
     (夢に酔う青年詩人の見事な表現です。「小雨ふる町のかたへに白きあじさい」魅力的な表現ですね。)

    久しぶりに顔を上げれば雲の上に雲がありまたその上の雲
     (覆いかぶさる、ぶ厚い雲の重なりをこれでもか、これでもかと、「雲」を重ねて、巧みな表現です)

    ポケツトに切符はないから朝焼けの燃える地上へ向かふほかなく
     (京都市地下鉄の情況を詠まれましたか。大阪地下鉄と比べて、地下の深いところを走っています。階段を昇降するのがつらい。「向かふほかない」は、歌人のやりきれない思いをあっさりと、的確に言い切っているのが、快く響きます)

     ご自愛のほど祈ります。/E

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  2. 叙情性ということをいわれるとどうも最近は何を詠んでも叙情が薄いんですよね。僕自体の感情が薄いんで当たり前と云えば当たり前ですが。

    鉄也さんが選んで下さった4首目はまさに地下鉄の歌です。大阪よりも深いとは知りませんでした。

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