短歌結社誌『未来』の4月号を読んだ。今月も秀歌選をつくってしまおうと思う。『未来』2013年4月号に掲載されているすべての短歌より7首選んだ。掲載順に記す。
1 残夢とや草むら中に鳴き出づる虫の音と聞く目覚まし今朝は 米田律子
2 夜の駅三つほど過ぎ焦燥をいまだおし殺しきれずにいるのだ 阿部愛
3 日の丸に向かって射精できそうなくらい愛しているという比喩 阿部愛
4 シャンプーと思って取ったらコンディショナーだったので今日はもう買いません 阿部愛
5 まだ僕は平成二十二年製十円玉の光を見てない 中島裕介
6 靴跡に靴をかさねてやわらかい雪を漕ぐ非武装地帯の 柳澤美晴
7 海に雨(涙はすこし薄くなる)ウミガメプールに降るつよい雨 やすたけまり
1――このタイプの緊迫感を表現できる現代歌人を米田律子の外に知らない。結句「目覚まし今朝は」の独自性。
2――焦燥。「夜の駅三つほど過ぎ」の場面設定が秀逸。
3――「比喩」であるという奇妙な落ち着き。
4――あるある的内容なのかと思ったらそうではないという。
5――それだけの事実。
6――北海道の方言で雪の中を歩くことを「雪を漕ぐ」と言うらしい。ここでは方言として面白いのではなく、「非武装地帯」に繋ぐ表現として重要。非武装地帯の衝撃。それはもう非武装地帯なのであろうが、ここでの意図は。
7――雨は海に降り、そしてウミガメプールに降っている。涙はウミガメのものなのか、他の誰かのものなのか。ほとんど水属性の語で一首を構成する構想が興味深い。
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