短歌結社誌『塔』の4月号を読んだ。今月も秀歌選をつくってしまおうと思う。『塔』2011年4月号に掲載されているすべての短歌より5首選んだ。掲載順に記す。
1 ここにむかし歩道橋があったのだ その赤さびのようなゆうぐれ 吉川宏志
2 絵馬に絵馬重ねて吊るす時雨ふる天満宮の人混みのなか 吉川宏志
3 外は雨であるかもしれず何ごともなければ海であるかもしれず 松村正直
4 焼く前に向きを決めねばならぬとて鳩サブレーの頭は左 相原かろ
5 由良川の流れにそひて下りゆく僕たちは今、日本海へ向く 長谷川博子
1と2の吉川宏志の歌が異常に渋い。2は一見すると客観的に状況を詠んだだけに見えるが、「時雨ふる天満宮の人混みのなか」という状況設定がめちゃめちゃ渋く、そこに前半の「絵馬に絵馬重ねて吊るす」というなんとも言えない味のある動作が重なって、閑寂な世界観を構成している。彼の力量が存分に発揮されている作品だ。
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