短歌総合誌『短歌研究』(短歌研究社)の2月号を読んだ。今月は、巻頭作品で穂村弘が「「鼻血」のママ」50首、「作品連載」の欄で東直子が「これだけの荷物」30首を寄稿していた。穂村弘と東直子はともに歌人集団「かばんの会」に所属する歌人で、2人とも現代短歌界において最も影響力がある歌人の中の1人だと思う。
この2人に共通して言えるのは、一首一首の短歌に激しいインパクトがあることで、数十首あっても、少し緩くしたような、手を抜いたかんじの短歌が一首もない。この号の作品も刺激的なものばかりだったが、特に、
応答せよ、シラタキ、シラタキ応答せよ、お鍋の底のお箸ぐるぐる 穂村弘
カルピスのフルーツみたいの買ってきて だけどどこにもそれがなかった 東直子
この2首が印象に残った。東直子の歌は一見ユーモラスだが、どこか悲しい。
今月は他にも、「相聞・如月によせて4」と題して若手女性歌人の山崎聡子、大森静佳、服部真里子、小玉春歌、佐藤羽美、堀越貴乃、野原亜莉子、歌崎功恵、古谷円、やすたけまりの10人が7首ずつ寄稿していた。この欄はおもしろい短歌ばかりだったのだが、特に、
川沿いの工場跡が水性のインクのにおい立てて夕景 山崎聡子
巡るだけ巡れ青色に塗り分けた静脈、赤い色の動脈 山崎聡子
名を呼べば手を振れば消えそうだった 銀杏散り敷く道で別れて 大森静佳
この3首が印象に残った。大森静佳氏の存在は結社誌「塔」の2011年1月号で初めて知ったのだけれど、情感あふれる内容と知性的な韻律のまとまりからはゆるぎない実力が感じ取れる。
私は現代歌人の名前を多く知っているわけではないので、山崎聡子氏のことは初めて知ったが、視点のおもしろさと動きのある言葉の流れには強い個性を感じるし、作品全体がよく統制されていて、一首一首に世界観があると思った。これからの活躍に注目したい。
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