一短歌ファンが勝手につくってしまう秀歌選、第1回は佐藤佐太郎(1909~1987)だ。彼は斉藤茂吉に師事し、師とともに「アララギ派」を代表する人物だ。佐藤志満編『佐藤佐太郎歌集』(岩波書店)所収の1451首より6首選んだ。概ね年代順に記す。
1 しづかなる一むらだちの葵さき入りこし園は飴色の土
2 苦しみて生きつつをれば枇杷の花終りて冬の後半となる
3 係恋に似たるこころよ夕雲は見つつあゆめば白くなりゆく
4 今しばし麦うごかしてゐる風を追憶を吹く風とおもひし
5 しろじろと虎杖の咲く崖が見え
6 地下道を出で来つるとき所有者のなき小豆色の空のしづまり
細かい写実描写と、4の「追憶」、5の「幸」のような抽象的表現の融合が見事だ。
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