塔短歌会の黒田英雄氏のブログ『黒田英雄の安輝素日記』の記事「短歌(うた)を読む素養」にこんなことが書いてあった。
俺は歌人との交流はないが、歌人という連中が、自分の歌のことだけ考え、他の結社に全く興味がなく、ただひたすら自分自分とうなっている、そんな自意識の中でしか生きていない社会性ゼロの連中に思えて嫌悪するのだ。私のように、自分のブログで名歌選や秀歌選をやる歌人がなぜおらんのだ(除く伊波虎英)!「読むこと」を重視しているはずの「塔」の連中ですらやらない。こいつらも駄目だ。自作の発表だけでなく、他人の歌を評価するということが、自身の短歌観の表明に役立つということが、どうしてこいつらはわからんのだ。俺がこの無名の歌人を発見したのだという自負心が飛び交うようになって初めて、短歌というものは活性化するだろう。だから俺は、明日も明後日も、名歌選秀歌選をやり続ける。
この主張はなかなかおもしろい。私自身選歌は大好きなので、結社誌「塔」の秀歌選をつくってみることにした。『塔』2011年1月号に掲載されているすべての短歌より8首選んだ。掲載順に記す。
1 好きなだけ時間をかけて自らの歯を磨くとは贅沢な時間 松村正直
2 赤い夾竹桃白い夾竹桃そして病院の地下へと続くゆるき坂見ゆ 杉本潤子
3 湯を沸かし菜をきざみつつキッチンで私は何をかんがえている 沢田麻佐子
4 五条烏丸ごじょうからすまくりかえし声にしてみる遠くの街を 宮地しもん
5 メダカ飼う小さきパン屋へ寄り道す君らにふいと会いたくなって 村瀬美代子
6 憎むにせよ秋では駄目だ 遠景の見てごらん木々があんなに燃えて 大森静佳
7 どこまでも逆光である ゆるやかに睫毛を立てて君を見るとき 磯部葉子
8 網戸越しに見ていた空に網の目がはびこってもうどうにも網戸 相原かろ
印象的なフレーズが多い。4の「ごじょうからすま」、8の「どうにも網戸」は特に心に残る。
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