一俳句ファンが勝手につくってしまう秀句選、第3回は種田山頭火(1882~1940)だ。彼は尾崎放哉とともに自由律俳句を代表する俳人だ。山頭火は早稲田大学の英文科に進むも、神経衰弱のため退学、後には妻子を捨てて乞食となって各地を放浪した。石寒太編『種田山頭火』(蝸牛社)所収の300句より28句選んだ。概ね年代順に記す。
1 まつすぐな道でさみしい
2 まつたく雲がない笠をぬぎ
3 また逢へた山茶花も咲いてゐる
4 笠も漏りだしたか
5 うしろすがたのしぐれてゆくか
6 笠へぽつとり椿だつた
7 何でこんなにさみしい風ふく
8 どこかそこらにみそさざいがゐる曇り
9 ここにふきのとうがふたつ
10 かうしてここにわたしのかげ
11 誰か来さうな空が曇つてゐる枇杷の花
12 よびかけられてふりかへつたが落葉林
13 ふりかへる椿が赤い
14 この道しかない春の雪ふる
15 生えて伸びて咲いてゐる幸福
16 誰も来ないたうがらし赤うなる
17 ことしもここに石蕗の花も私も
18 病めば梅ぼしのあかさ
19 何を求める風の中ゆく
20 ほつと月がある東京に来てみる
21 みんなかへる家はあるゆうべのゆきき
22 死ねない手がふる鈴ふる
23 秋風、行きたい方へ行けるところまで
24 枯枝ぽきぽきおもふことなく
25 窓あけて窓いつぱいの春
26 秋風あるいてもあるいても
27 こしかたゆくすゑ雪あかりする
28 もりもりもりあがる雲へ歩む
5と14が異常にかっこいい。彼の自由を極めた芸術には、読者を惹きつけてやまない魅力がある。
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