一俳句ファンが勝手につくってしまう秀句選、第2回は堀口星眠(1923~)だ。彼は東京帝国大学卒業の医師で、在学中に同じく医師である水原秋櫻子に師事した。星眠は「高原派」と呼ばれるほど、高原を題材にした作品を多く残している。『堀口星眠』(春陽堂)所収の自選300句より19句選んだ。掲載順に記す。
1 髪切虫一庭荒れしまゝの夏
2 百舌鳥の朝噴煙天にとゞこほる
3 教会のくらさ向日葵を見しゆゑか
4 とりどりの秋果買ひゆけりミサのあと
5 地の涯に夕映ありぬ青すゝき
6 星の空なほ頬をうつ粉雪あり
7 せきれいや日のさす方に雪しげく
8 雪渓に石投げて音かへり来ず
9 時鳥ゆふづく町にセロリ買ふ
10 夏痩せてゆふすげ淡き野にきたる
11 噴煙の下密猟の銃鳴らす
12 暮るるまで雉子鳴きし夜の月まどか
13 雲爽やかキヤベツの高荷人載せて
14 父といふ世に淡きもの桜満つ
15 胸ひらく母の眼をして斑雪山
16 軍配昼顔熱砂をにじりつつ咲けり
17 晩夏なり
18 鯛焼の順を待ちをり田舎医師
19 夢もなき顔をして売るシヤボン玉
言葉が非常に洗練されていて、淡い光の中にいるような透き通った印象を受ける。
0 件のコメント :
コメントを投稿