ゆびさきを針でつつけばさらさらの血がうつくしくみとれてしまう
岸原さや『声、あるいは音のような』
血がうつくしくみとれてしまう――下の句に主題が率直に示される。たっぷりと14音を使って、素直に。しかしこれだけでは詩は成り立たない。ディテールは上の句に示される。
小さい「ゆびさき」をさらに微小な「針」の先でつついて出来上がったごく小さな起点、その起点から「血」が流れ出す。そしてその血は、粘性のない、「さらさらの血」だ。極めて細い血の筋がゆびに淀みなく流れるさまが想起され、このとき、作品世界内の作者の意識と読者の意識は奇跡的に一致する。私はその血を見て、美しさに、みとれてしまう。
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