2012年8月11日土曜日

塔 2012年8月号秀歌選

短歌結社誌『塔』の8月号を読んだ。今月も秀歌選をつくってしまおうと思う。『塔』2012年8月号に掲載されているすべての短歌より5首選んだ。掲載順に記す。

1 この世からどこへも行けぬひとといる水族館の床を踏みしめ  大森静佳

2 傘をさすもささぬも自由な新宿の横断歩道を闊歩してゆく  宮崎可奈子

3 一枚の大きなる布なみうたせエイは舞いおり水槽の空  田村龍平

4 鍵のない老父ちちの書斎にかざられし運河の油彩を我は愛する  田村龍平

5 町工場の暗き奥より火花散る火花散る時人影が見ゆ  小坂英輔

1と3は同じ水族館を扱った作品として好対照をなしている。

4は前半の緻密な描写から、結句の直截的な「我は愛する」を滑らかに導入する完成度の高い作品。

4 件のコメント :

  1. >この世からどこへも行けぬひと

    この言葉の含意を一生懸命考えておりました。。。
    まだ、答えは見つからず・・・です。

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  2. コメンターがコメントした作品に、さらに、コメントするのは、おかしいですが、今更、そんなことは言っておられません。わがpoorな歌を少しでも、良くするには、人の作品を鑑賞しなければなりません。(常々、歌の師匠から言われていることです)

    「水族館」(アクアリウム)は、短歌の詞に受け入れやすいですね。
    私も、いくつか作ってみました。水族館は、伊勢・鳥羽の水族館です。
    自動演奏のピアノが鳴っていたのを覚えています。

    二人の作者が「水族館」を詠っているのは、偶然かもしれませんが、確かに水族館は詠いたく、そして歌いやすい詞です。

    1「この世から」の歌の、床を踏みしめるは、水族館は、大きな装置の、地下にも養魚場の水槽があって、ポンプがあって、装置があれば、床を踏みしめる意味が格別のように思えてきます。

    3「一枚の」のエイの歌の、テレビ画面に出てくるようで、歌の詞から、はっきり想像できることは、この歌に相当の力があるということです。水面近くを巨大なエイが泳ぐ様は異様で、印象に残ります。/E

    良き短歌作者は、良きコメンターでもあるのですね。

    残暑、ご自愛のほど祈ります。/E

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  3. >HANAさん

    その部分の意味するところは僕もわかりません。ただ、ちょっと大袈裟な表現が「水族館」に繋がっているところがいいと思いました。

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  4. >HaraTetsuya1さん

    確かに水族館は短歌の素材として魅力的ですね。

    鳥羽水族館ですか、いいですね。僕も行ったことがあります。

    「一枚の大きなる布なみうたせ」っていうおおらかな上の句がエイの量感を表現して余りある、素晴らしい表現だと思います。

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