短歌結社誌『塔』の8月号を読んだ。今月も秀歌選をつくってしまおうと思う。『塔』2012年8月号に掲載されているすべての短歌より5首選んだ。掲載順に記す。
1 この世からどこへも行けぬひとといる水族館の床を踏みしめ 大森静佳
2 傘をさすもささぬも自由な新宿の横断歩道を闊歩してゆく 宮崎可奈子
3 一枚の大きなる布なみうたせエイは舞いおり水槽の空 田村龍平
4 鍵のない
5 町工場の暗き奥より火花散る火花散る時人影が見ゆ 小坂英輔
1と3は同じ水族館を扱った作品として好対照をなしている。
4は前半の緻密な描写から、結句の直截的な「我は愛する」を滑らかに導入する完成度の高い作品。
>この世からどこへも行けぬひと
返信削除この言葉の含意を一生懸命考えておりました。。。
まだ、答えは見つからず・・・です。
コメンターがコメントした作品に、さらに、コメントするのは、おかしいですが、今更、そんなことは言っておられません。わがpoorな歌を少しでも、良くするには、人の作品を鑑賞しなければなりません。(常々、歌の師匠から言われていることです)
返信削除「水族館」(アクアリウム)は、短歌の詞に受け入れやすいですね。
私も、いくつか作ってみました。水族館は、伊勢・鳥羽の水族館です。
自動演奏のピアノが鳴っていたのを覚えています。
二人の作者が「水族館」を詠っているのは、偶然かもしれませんが、確かに水族館は詠いたく、そして歌いやすい詞です。
1「この世から」の歌の、床を踏みしめるは、水族館は、大きな装置の、地下にも養魚場の水槽があって、ポンプがあって、装置があれば、床を踏みしめる意味が格別のように思えてきます。
3「一枚の」のエイの歌の、テレビ画面に出てくるようで、歌の詞から、はっきり想像できることは、この歌に相当の力があるということです。水面近くを巨大なエイが泳ぐ様は異様で、印象に残ります。/E
良き短歌作者は、良きコメンターでもあるのですね。
残暑、ご自愛のほど祈ります。/E
>HANAさん
返信削除その部分の意味するところは僕もわかりません。ただ、ちょっと大袈裟な表現が「水族館」に繋がっているところがいいと思いました。
>HaraTetsuya1さん
返信削除確かに水族館は短歌の素材として魅力的ですね。
鳥羽水族館ですか、いいですね。僕も行ったことがあります。
「一枚の大きなる布なみうたせ」っていうおおらかな上の句がエイの量感を表現して余りある、素晴らしい表現だと思います。