一俳句ファンが勝手につくってしまう秀句選、第6回は高柳重信(1923~1983)だ。彼は富沢赤黄男に師事し、4行書きの俳句など前衛的な作品を多く残した。特に、詩全体の形が絵画的な意味を持つカリグラムという手法を応用した俳句は印象的だ。これは言葉で説明するよりも実際に重信の作品を見てもらったほうが早いだろう。夏石番矢編『高柳重信』(蝸牛社)所収の300句より8句選んだ。概ね年代順に記す。
1 佇てば傾斜
歩めば傾斜
傾斜の
傾斜
2 時計をとめろ
この
あの
止らぬ
時計の暮色
3 踊らんかな
(瀕死)
真赤な
血の手拍子
4 森
の 夜
更け の
拝
火の 弥撒
に
身を 焼
く 彩
蛾
5 咲き
燃えて
灰の
渦
輪の
孤島の
薔薇
6 ●●○●
●○●●○
★?
○●●
―○○●
7 一
階
二階
三階
旗
さよなら
あなた
8 軍艦が軍艦を撃つ春の海
1は本当に「傾斜」しているし、4は「蛾」の形をしているし、7は階段を形成している。6は文字化けではない。